アルコール依存症

アルコール依存症は、長い間にわたって大量にアルコールを飲んだ事で、
アルコールなしではいられない状態、つまり飲酒コントロールが難しくなる状態です。

日本ではお酒を飲む人の26人に1人がアルコール依存症という計算になります。
居酒屋さんの満席時の平均客数は20～60人程度と言われますので、
その中に1人～2人いてもおかしくない事になります。

アルコール依存症と聞くと、単なる「酒好き」や「やめる意志が弱いだけ」と思われがちですが、実はそうではありません。
アルコール依存症はアルコールが脳の構造や機能に影響を与えている状態、
つまり脳がアルコールに支配されている事が原因で生じる「脳の病気」です。
そのため、自分の意思ではお酒をやめたいと思っても、どうしてもやめられない状態に陥ります。そこに意思が弱い・強いは関係ありません。

お酒が切れると、いろいろな心身の症状が現れます
不眠、発汗、手の震え、けいれん、吐き気、血圧上昇、不安、イライラなど
人によっては一過性の幻覚・妄想が見られることもあります

・幻聴
→誰もいないのに自分を呼ぶ声がしたり、自分について批評する人たちの声が聞ええてくる

・妄想
→「自分は殺される」「誰かに狙われている」と信じ込み、その不安や恐怖ゆえに、暴れたり大声を出したり、時には他者への攻撃や自傷行為が生じる場合もある
→配偶者や恋人が浮気をしていると思い込む「嫉妬妄想」は、アルコール精神病の特徴的な妄想とされています

・新しいことが覚えられない（前向性健忘）

・今さっきの記憶がなくなる（即時記憶障害）

・つじつまを合わせるために、作り話をしてしまう（作話）

・自分が今どこにいるか、今何時かなどがわからなくなる（見当識障害）

・感情コントロールがうまくいかなくなる。抑制（いわゆるこころのブレーキ）がきかなくなり、怒りっぽくなったり、うつっぽくなったりする。暴言や暴力、嘘をつく事もある。

・何事も認めない。特に他者の言う事を頭から否定してかかる。飲んでいるのに飲んでいないという（否認）

・過去や将来を考えず、今さえ良ければいい。目の前の快楽を求めようとする（刹那主義）

※個人差はあります。あくまでも目安です
※純アルコール量10g＝1単位での計算

・度数5％の500ml缶ビールを1日2本×週5日飲酒＝30年で依存症

・度数5％の500mlの缶ビールを1日5本×週5日飲酒＝5年で依存症

◎最近流行りのストロング系酎ハイはもっと危険です

・度数9％の500mlストロング系酎ハイを1日3本×週5日飲酒＝5年で依存症

◎甲類焼酎（大五郎など）はどうでしょうか

・度数25％の大五郎4Lを1週間で飲み切るペース＝3年以内に依存症

以前は1日に「純アルコール量20g」程度であれば、節度ある飲酒量とされていました。わかりやすく言えば、5％の缶ビール500mlだと1日1本、日本酒1合180ml、25度の焼酎100mlとなります。

しかし、2018年に発表された論文によると、お酒は「0杯」が最も良いという研究結果が出ています。
つまり健康のために良い飲酒量というものは存在せず、単純に「飲めば飲むほど体に悪い」「飲む人は飲まない人よりも様々な病気に罹りやすい」という事がわかっています。

例えば男性の場合、1日500mlの缶ビール（5％）を1日1本ちょっと、それを
毎日飲み続けると、脳出血、大腸がん、前立腺がんの発症リスクが高まります。
女性の場合は同様の量の飲酒で胃がんや肝臓がんの発症リスクが高まるとされています。

詳しい資料はこちらをご覧ください

当院は岩手県からアルコール依存症の「依存症専門医療機関」として選任されています

依存症専門医療機関とは、依存症に係る所定の研修を修了した医師・スタッフが配置され、依存症に特化した専門プログラムを行うなど、
依存症に関する専門的な医療を提供できる医療機関として県が選定するものです

当院では外来・入院治療だけでなく、
アルコール依存症治療プログラムや、アルコール依存症患者さまの家族教室、研修会講師の派遣などを行い、患者さまを多面的に支援しています